2012年8月〜2015年6月の約3年間「瀬戸内・松山食べ巡りプロジェクト」で、取材撮影をした編集部によるレポートです。
事業期間終了と共に運営変更に伴い、「瀬戸内・松山 しまめぐり」の事業では更新することはありませんので、ご了承いただきますようお願いします。
お食事処のみよしの「おやき」は優しい甘い味
四国八十八ヶ所霊場五十一番札所・石手寺。境内ほとんどの堂塔が国宝、国の重要文化財に指定されており、四国霊場では随一ともいえる文化財の寺院でもある。そのようなこともあり、信者や観光客も多くまたお遍路さんもよく見かける。
そのお遍路さんの接待からうまれた「おやき」を焼かれている創業明治元年の老舗「お食事処みよし」は、石手寺の道路を挟んだ前にある。
窓を開けると香ばしい焼いたお餅の匂いがしてくる。おやきとは、いわゆる「焼き餅」のことである。
4代目三好さんの義妹白石さんに、お話を伺った。餅の生地は、お米のみ。いいお米を使うと粘りがあって、滑らかで美味しい仕上がりになるそうだ。
その中に餡が入っており、丸めたあと平たく形を整える。
平らになったおもちに焼印をつける。
この木製焼印は、石手寺の住職の叔父(彫師)が彫られたそうで今も大切に使われている。焼くと、㊂という文字が浮かび上がってくる。
焼くのにおよそ5分。とても香ばしい匂いとその焦げ目。生地の練り・火の加減そして返すタイミングがコツだと言われていたが、長年の力が伝統の味を守り続けられているのだろう。
緑色のおやきは、宇和島産のヨモギを使用。昔は近隣の山にヨモギを取りに行き、包丁でたたいて使用されていたそうだ。
「混ぜてないので翌日になると固くなる。その日に食べて頂きたいので、お問い合わせはあるけど送ったりはしていないのですよ。」と言われていた。美味しい状態で食べて頂きたい!という想い、長年守り続けられた味に対する想いが熱く伝わってきた。
店内では食事ができるスペースがあり、地元の方や旅行者で情報交換も楽しめ旅の疲れも一息入れることができる。
お遍路さんの接待から始まったおやき。お接待とは、お遍路さんは「お大師様(弘法大師)と同じ」また仏様と同じとされ、道中で果物やお菓子などを手渡される。高浜虚子の小説「伊予の湯」に、「門前の茶店でお焼きという焼き餅を買った」という記述がある。長い間多くの方に親しまれてきた焼き餅は、これからも守り続けられた味で皆さんを優しく迎えてくれる。
【お食事処みよし】
住所:松山市石手3-7-29
電話番号:089-977-0500
営業時間:8~17時
駐車場:有