2012年8月〜2015年6月の約3年間「瀬戸内・松山食べ巡りプロジェクト」で、取材撮影をした編集部によるレポートです。
事業期間終了と共に運営変更に伴い、「瀬戸内・松山 しまめぐり」の事業では更新することはありませんので、ご了承いただきますようお願いします。
伊予路に春を呼ぶ「椿まつり」開催!お忍びの渡御とは・・・
伊予路に春を呼ぶ「椿まつり」が、2月16日(土)~18日(月)の3日間開催された。前半2日間は天気に恵まれ、また週末も重なり多くの参拝者が訪れた。
伊豫豆比古命神社は「椿神社」「お椿さん」と呼ばれ、椿まつり(正式名称を“春季例大祭”)では毎年約50万人の参拝者で賑わう。
椿まつりは初日午前0時の大太鼓から始まり、最終日24時までの72時間昼夜を徹して行われる。門が閉じられないのは、24時間3日間共に神々の御神威が1年間もっとも輝いていらっしゃるという意味だそうだ。
祭りは祈り・賑わい・直会(なおらい)の三部で構成。椿さんの祭りは、祈りの祭りであり参加する祭りである。
普段は見る事ができない拝殿と御本殿を囲む廻廊、御本殿裏などである。
椿まつりの期間中で最も参拝者が多く混雑をみせる中日の夕方、御祭神を神輿にお遷しし金刀比羅神社(北土居町)のお旅所まで御神幸願うお祭りがある。これがお忍びの渡御(おしのびのとぎょ)と呼ばれている。お忍びの渡御は、出御祭(宮出し前の神事)→宮出し→御旅所祭→還御祭(宮入後の神事)までのことである。
出御祭は、関係者のみで厳かに行われた。
宮出しは神輿が社殿より参道・楼門へと至る間に限り、舁き夫は一切掛声を発せず黙し又上下左右に神輿が舁き揺することなく、ただただ静々と舁き出していく。その静粛とした様子が、神様が秘やかに御出御されるが如くに写るので「お忍びの渡御」と呼ばれるようになったそうだ。
なぜ声を出さず神輿を揺すらすことなくかき出されるのかは、神輿にお遷りする神様は女神の伊豫豆比売命(いよづひめのみこと)であり、男神の伊豫豆比古命に気付かれぬよう密かにお出ましになられるため、という一説もある。また参拝客の傍らまで神様が降りて来られるまでの間は、老若男女が心静に手を合わせてお祈りをするため等、様々な説があるそうだ。
楼門を出ると声を発し、国道33号線交差点までの約1kmそして金刀比羅神社まで舁く。
多くの舁き夫さんは、掛声を掛け合いながら数ヶ所で神輿を回す。提灯の明かりを先導に、金箔で飾られた神輿が回る様子に参拝者から歓声と拍手があがっていた。
渡御の際、道筋に当たる家々ではその年の正月に飾った輪じめ等を家門にて焚きかがり火とし、神輿をお迎えする風習がある。合せ火や五馳走火ともいわれる。
白い着物に烏帽子・羽織姿で合わせ火諸役と書いた提灯を提げて、椿橋付近で斉灯(神様の灯明としてたくかがり火)に受け神輿を迎えるのに先立ち道筋のかがり火をつけて回る。かがり火は18ヶ所つけられ、その間を神輿が通る様は幻想的でもあった。
そして神輿は、金刀比羅神社に到着する。
御旅所祭は巫女による「浦安の舞」が披露され、その後再び椿神社へ神輿は戻る。
椿まつり期間中、特別祈願祭があり「縁起開運」「商売繁盛」「大漁満足」を祈る人が数多く見られる。
祈りを捧げた後に大きな椿の樹下、山村で採れた“山の幸”と“海の幸”をやりとりする物々交換の市と情報交換の場でもあったとの説話があるそうだ。
伊豫豆比古命神社前の県道約1.5kmは全面交通遮断され、その両側に約800点の露店が立ち並び賑わう。
楼門を入って境内で宝船・縁起笹などの縁起物を売っている方に話を聞いてみた。
伊豫豆比古命がこの地に船を寄せたという故事にちなんで、宝船は椿神社特有の縁起物となったそうだ。
またご自身にとっての福をかき寄せる「くまで」
ご自身にとっての福をかき集める「ざる」などの縁起物もあり、多くの方が買い求められていた。
椿まつり期間中のみ授与される「大繁昌冨久椿」は、大きなお守りである。社内・家内の神棚にお祀りするか、「冨久招き」の意味を込めて玄関先にお祀りしてもいいそうだ。
こちらは随時ある「冨久椿」は、冨久を招く縁起物として親しまれている。
またあちこちにある「開運おみくじ」をひいていた。
椿まつりの名物「おたやん飴」は、どこから折っても切り口からお多福の幸せの顔が出てくる長い棒飴である。食べやすいように一口サイズになっている物もある。
「おたやん」とは、伊予の方言で健康な娘さんという意味がある。開運を願って椿さんにもうでた帰り、おたやん飴を買ってお多福を祈るという一説がある。昭和初期頃からの販売のようで、砥部町の池田製菓様のおたやん飴である。
外側を巻く飴が白・青・オレンジ・ピンクの4色。中は口とほほ紅がピンク、目・鼻・眉毛・高眉・髪の毛が茶色である。伝統の手法でおたやん飴は作られ、きちんとお多福の幸せな顔になるのは職人の腕なのであろう。
また「冨久椿」や「紅白の椿饅頭」(株式会社一六本舗さん)など、椿まつり限定のお菓子がありとても人気がある。
縁起でお守り代わりにおカネを貸す「貸し銭」の特殊神事がある。小額の守り金を借り、翌年は倍額にしてお返しする行事である。誰もが無条件に借りることが出来る神と人との信仰と信頼に基づいた特殊祭儀であり、本年も生活に励み来年無事にお返しの参拝が出来ることを祈る祭儀である。
江戸時代に行われた散銭の行事が変形したものみたいですが、全国的にも珍しいようです。
椿まつりの日程は「立春に近い上弦の初期に椿祭を執り行う」であり、現在旧暦の1月7・8・9日を椿まつりの斎行日としている。
来年の椿まつりは、2014年2月6日(木)~8日(土)である。
神輿が参道を渡る様子
浦安の舞
【伊豫豆比古命神社】
住所:愛媛県松山市居相2-2-1
電話番号:089-956-0321
伊豫豆比古命神社HP:http://www.tubaki.or.jp/index.php
2014年の椿まつりはこちら:http://ritoumeguri.com/14621/