2012年8月〜2015年6月の約3年間「瀬戸内・松山食べ巡りプロジェクト」で、取材撮影をした編集部によるレポートです。
事業期間終了と共に運営変更に伴い、「瀬戸内・松山 しまめぐり」の事業では更新することはありませんので、ご了承いただきますようお願いします。
お遍路さんのこころ、体験者の声を届けます
お遍路さんをして感じるものや得るものは、人それぞれです。
また巡ってみたい・・・
そのように思う人が多い四国遍路の魅力を、体験者の声から届けます。
手を合わせる
もともと神社や寺が好きだったという伊野木さんは、実母のお遍路巡りをきっかけに一緒に巡ろうと思います。車で巡るお遍路は、時に喧嘩もしたこともあったとか。しかし「これまでこれほど母と話すことはなかった」と感じることができたのも、遍路時間と同行の旅が生み出したものであり親子の絆を強めたことでしょう。
お遍路をしていて精神的に成長しているように感じます、と様々な想いを話してくれました。何か探し求めてきたけど、目に見えないとても大事なものと出会った感じがします。お接待を受け人の優しさや温かさを感じることができ、それは感謝の気持ちとなり次の人に繋がってほしいと思っています。脈々と1200年も続いている四国遍路文化には、弘法大師をはじめとする人との繋がりが足跡を作り、それはこれからも続いていくのだと・・・また自然の厳しさは自然の中で生かされていることを実感し、生まれてきたことやいま生きていることに感謝しています。「手を合わせる」ことで心が落ち着き、自分の内側に意識を向けられる時間となり、お参りできることに感謝する心が生まれます。
四国八十八ヶ所以外の多くの神社仏閣にお参りする伊野木さんに、それぞれで感じた心を聞いてみました。
「何人でも受け入れてくれる」そう仏様には感じ、神社は時に呼んでくれないと行けないということもあったそうです。境内全体が癒される感じの寺に対し、神社はシャキッと背筋が伸びるような厳かな感じであり、それぞれの空気感が違います。神仏習合の日本、長い歴史が育ててきたものであり、四国遍路も同じなのかもしれません。
まずは八十八ヶ所の1ヶ所でもお参りしてほしいと思います。1200年続く四国遍路をすぐに理解するのは難しいし言葉にするのも難しいです。目に見えるものより目に見えないもののほうが、大事なものなのかもしれません。頭ではなく心で感じるもの・・・巡っているうちに、感じるものや見えてくるものが必ずあると思います。(伊野木文里さん)
難しさの中に面白さ
10年ほど前、Camino de Santiago巡礼中に日本人から聞いた四国遍路に興味を持ち、そのあと巡礼のため来日。1000年以上の歴史を持つCamino de Santiago巡礼とはサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指しますが、その路は多くあり直線になります。反対に四国遍路は円で順打ちと逆打ちがありますが同行程で、その違いに興味を持ったようです。
実際お遍路の旅は思っていた以上に「難しい」と感じました。スペインの巡礼はワインを飲み楽しいけれど、四国遍路は山や谷ありなどの自然の厳しさや言葉の壁にぶつかり本当に疲れました。しかしその中で人の心に触れる「お接待」という文化に感動し、言葉を越えた人の温もりを感じたそうです。
Matthew Iannaroneさんは、アメリカテキサス出身で人類学を専攻していたこともあり日本文化や四国遍路にもひときわ興味を持ったようです。キリスト教の宗教観をもつMatthewさんが四国遍路を通し日本人の宗教観についてどのように思っているのか聞いてみたところ、「誰でもウェルカムでオープンが面白い」と言われていました。神道も仏教も一緒になっているのが不思議で面白く、その中で引き継がれているお大師さんのお遍路文化が残っているのは面白いと感じたようです。
松山八ヶ寺の中で第51番札所石手寺が好きなMatthewさん。外国の人には多いようですが、なんだか不思議なお寺として人気が高いようです。
現在、範子 Iannaroneさんと泉ゲストハウスを経営されていますが、Matthewさんが体験したお遍路を伝えらえています。またスペインの巡礼をしながら四国遍路を広める活動もされ、遍路の魅入られているようです。今度は範子と一緒に四国八十八ヶ所を巡りたい、そう話すMatthewさんはこの松山が大好きだと言われていました。(Matthew Iannaroneさん)
四国がより好きに
「四国のことを知りたい」それがお遍路をするきっかけでした。香川県出身の範子さんが関西で暮らすようになった時に、故郷を想い気持ちが強くなったそうです。友だちと2人で区切り打ちで巡り、約6年かけて結願しました。
お遍路の格好をすると、周りはもちろん自分もお遍路さんとしての意識が生まれます。お接待が何よりも印象的で、目に見えない人の心を感じ、自分が皆さんの力で歩かせて頂いているということに気付きました。日常生活を離れたお遍路さんという特殊な体験は、世界観が変わり視点も変わります。見慣れた場所でも今まで気付かなかった所に目がいき、新しい発見や気付きがあります。
現在、範子さんは夫のMatthew Iannaroneさんと泉ゲストハウスを経営しています。「ゲストハウスをしてみたい」と思っていた範子さんは関西のゲストハウスで働き、そこで知り合ったMatthewさんと意気投合し、四国遍路の街である松山市で開業。範子さんがお遍路で経験したものを活かされ、様々な視点から伝えられています。
松山八ヶ寺は高低差も少なく比較的歩きやすいし、街の中、歴史や豊かな自然などいろんな変化を味わえます。気軽に巡れ、また寄り道をしながらいろんな発見をして楽しみながら巡ってみるのも面白いのではないでしょうか。(範子 Iannaroneさん)