2012年8月〜2015年6月の約3年間「瀬戸内・松山食べ巡りプロジェクト」で、取材撮影をした編集部によるレポートです。
事業期間終了と共に運営変更に伴い、「瀬戸内・松山 しまめぐり」の事業では更新することはありませんので、ご了承いただきますようお願いします。
民宿旅館 長珍屋
四国八十八ヶ所霊場の遍路宿として、松山市に入り最初の第46番札所 浄瑠璃寺の前にある長珍屋は、お遍路と同じく長い歴史があります。浄土へ渡ることを目的とし僧たちを中心に行われていた「修行」から、「遍路」として広まりを見せだしたのは江戸時代と言われています。その頃、第45番札所の岩屋寺との間にある坂本屋周辺から浄瑠璃寺まで10軒を超す多くの遍路宿があり、長珍屋もその1つでした。今では長珍屋の1軒のみとなったが、多くのお遍路さんの憩いの場として迎えられています。
長珍屋は江戸時代に、浄瑠璃寺の近くにある光明寺の住職 香川浄海(芳光)氏により始められました。その頃、提灯張りもしていたこともあり屋号を「長珍屋」としたのではないかと、女将の加川あけみ氏が話します。多くのお遍路さんの中には、280回の遍路行そして230余基の道標建立した四国遍路の大先達である中務茂兵衛(なかつかさもへい)も、この長珍屋に泊まったと言われています。
現在第5代目になる加川昭三氏と女将のあけみ氏で迎えるようになったのは、2011年頃のこと。第4代目である昭三氏の母 加川節子氏は「どんな人だろうと皆さんがお大師様だと思って、誠心誠意の気持ちを込めて。」という気持ちでお遍路さんを迎えており、それを第5代目も大切に守られています。
もともと農家である加川家は、多くの自家製の米や野菜などを出すようにしています。安心・安全であり何よりも心がこもっていて、それがおもてなしとなっているのです。瀬戸内の新鮮な魚介類や旬の素材をふんだんに活かした料理は、旅の疲れを癒してくれます。そして広々とした大食堂での食事は、いつしかお遍路さん同士の「縁」を生むこともあります。お遍路さん同士だからこそ分かり合えること…人の「縁」というのはそういうものなのかもしれません。
1955年頃からバスによる団体遍路少しずつ増え始め、それによって遍路の形も変わってきました。しかし今、歩き遍路が増え始めています。2014年は四国遍路開創1200年を迎え、四国霊場会主催のイベントや展示・報道などを通して人々の意識が高まっています。長珍屋はこれまでの長い間、時代の流れと共に変わるお遍路さんを見続けてきました。そしてこれからも安らぎと真心を込めたおもてなしで、温かく迎えてくれることでしょう。
【民宿旅館 長珍屋】
住所:愛媛県松山市浄瑠璃町甲119-1 第46番札所 浄瑠璃寺門前
電話番号:089-963-0280
収容人数:160名
客室:43室(バス・トイレ付19室、トイレ付15室)、大広間1、中広間2
料金表:素泊り 4,000円(税別)〜、1泊2食付 6,500円(税別)〜ほか
駐車場:乗用車50台・バス6台
その他:巡礼用品の販売あり
HP:http://www.chotinya.jp/