2012年8月〜2015年6月の約3年間「瀬戸内・松山食べ巡りプロジェクト」で、取材撮影をした編集部によるレポートです。
事業期間終了と共に運営変更に伴い、「瀬戸内・松山 しまめぐり」の事業では更新することはありませんので、ご了承いただきますようお願いします。
地域の交流を深める七草生産者
松山市日浦地区で毎年行われている七草の交流会は、地元の子どもたちと高齢者らの地域交流を深めるため2003年から始まった。この活動に七草を作っている松野禎治氏は、触っても食べても安全で安心な七草を提供しようと無農薬で栽培。虫がかじったような葉っぱに形も大きさも不揃いの七草は、なぜだか見ていて安心する。かつて禎治氏の父は七草生産者であり、多くの七草を出荷していたそうだ。その姿を見て育った禎治氏は「作物を育てる」楽しみを、自分が手がけ感じるようになったと話されていた。
日浦地区で春の七草を生産するようになったのは、日浦地区の冬場の産業を担うため約20年前に農協より提案。当時は5〜6軒の生産者いたが、今では高齢化が進み2015年は3軒で6万5千パックを生産。7品目を管理する大変さは並大抵のことではなく、ハウス栽培で風通しや病気予防など目が離せない。また農協が定めているパックの規定の大きさがあり、小さすぎても大きすぎてもいけないため出荷のおよそ1.5倍は作ると言われていた。昔ながらの自然が残る日浦地区が、空気・水などが良く食物を育てる上で環境に適している。しかし今、生産者が減っているのが現状であり、これからの課題でもある。
七草粥は平安時代に、古代中国から日本に入ってきたという言われがある。
平安時代の朝廷では「若菜摘み(年の始めに若菜を摘んで自然界から新しい生命力を頂き、風邪などの病を防ごうとする)」風習があり、また五穀豊穣を祈願する「7種の祝い(旧正月に米・あわ・ひえ・ごま・みの・小豆・きびの7品を入れた粥を食べ、1年の豊作を祈る)」という儀式も行われていた。
一方古代中国では、元日「鶏」・2日「狗(犬)」・3日「猪」・4日「羊」5日「牛」6日「馬」、そして7日は「人にも刑罰も与えず7種の若菜を入れた粥を食べ、無行息災や立身出世を願う」風習があった。日本に入って来た時に、「若草摘み」や「7種の祝い」と合わさり、平安時代の宮中行事として「七草粥」が始まった。当時は7種の穀物や野草で作られていたが、現在の7種となったのは鎌倉時代であり「河海抄」に記載が残る。江戸時代には「人日の節供」として五節供(桃の節供など)の1つとなったが、今では正月行事として定着している。
また正月のご馳走に疲れた胃腸をいたわり、青菜の不足がちな冬場の栄養補給になることから、新年の無病息災を願うようになった。7草にはそれぞれ薬効があり、ビタミンやミネラルの貴重な摂取源となる野草で粘膜を強化する作用に優れている。
セリ:数少ない日本原産緑黄色野菜で、セリ科の多年草。血脈を整え、保温効果や高血圧予防。
ナズナ:別名”ぺんぺん草”でアブラナ科の2年草。カルシウムやカロテンが豊富で風邪の予防。
ゴギョウ:別名”母子草”でキク科の二年草。咳・痰など風邪予防や解熱効果。
ハコベラ:”はこべ”のことでナデシコ科の2年草。ビタミンAが豊富で、腹痛薬に。
スズナ:”かぶ”のことでアブラナ科の1・2年草。葉はカロテンやビタミンCの多い緑黄色野菜で、腹痛薬に。
スズシロ:”大根”のことでアブラナ科の1・2年草。葉はカロテンやビタミンCが豊富な緑黄色野菜で、風邪予防や美肌効果。
ホトケノザ:キク科の2年草。食物繊維が豊富で胃腸に効果。
七草の交流会のレポートはこちら:http://ritoumeguri.com/24832/