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2012年8月〜2015年6月の約3年間「瀬戸内・松山食べ巡りプロジェクト」で、取材撮影をした編集部によるレポートです。
事業期間終了と共に運営変更に伴い、「瀬戸内・松山 しまめぐり」の事業では更新することはありませんので、ご了承いただきますようお願いします。

|イベント

アーティストが「道後オンセナート2014」にかける想い

道後温泉本館改築120周年を記念した芸術祭「道後オンセナート2014」は、2014年4月10日グランドオープンである。道後温泉本館改築120周年記念事業実行委員会が主催、歴史ある道後の町を現代アートで彩る。
グランドオープンを前に、2013年12月24日のプレオープニングイベントでは、壮大な光のインスタレーション「GINGA」で始まった。また杵村史朗氏の「ふりかえる」(道後温泉本館2階 神の湯二階席休憩室)、川瀬浩介氏の「LASTing WAVE」(道後温泉椿の湯1階)、藤木寛子氏の「路と鳥」(道後温泉観光会館とその周辺)も同時開催された。

杵村氏の作品「ふりかえる」は、道後温泉本館内に残る4枚の歴史絵を題材としている映像作品である。2階の休憩所のある場所で利用客が座ると、その背中に作品動画が投影される仕組みになっている。

道後オンセナート

その物語のテーマは『大国主命と少彦名命』『弘法大師』『白鷺伝説』『一遍上人』の4種類作られ、1編が1分〜2分半という長さのアニメーションがランダムに投影される。

道後オンセナート

『伊豫国風土記』に、大国主命が病気の少彦名命を湯につけたところ「あっ」という間に回復し、温泉の側にあった玉の石を踏んで立ち上がり石の上で舞ったという言い伝えが有る。この伝承から大国主命と少彦名命を道後の湯の神として、本館南側の湯神社に祀られている。(この玉の石は本館の北側にあり、上部にある「くぼみ」はその時の足跡だといわれている。)

道後オンセナート

『予陽郡郷俚諺集』(よようぐんごうりげんしゅう)では、怪我に苦しんでいた白鷺が岩間から噴出する温泉に浸かることで傷が治り飛び去った。それを見た人たちが試しに入浴してみると、爽快で疲労回復であり病人も全快したことで、盛んに利用することになったと言われるものである。

道後オンセナート

今回のアニメーションはなぜ人の背中に投影されるのか、杵村氏は語る。
「これまでの歴史を作り上げている人々が伝承されているのは、働く人や普通の人たちの協力があったからである。普通の人の背中こそ、見ていなければならない。それは自分の背中も見ている人がいる!」という事を、知ってほしいからである。

道後オンセナート

杵村氏は今回、初めての道後に来るにあたり先入観を持たないで(予備知識無しで)来られたそうだ。「時代時代で使われてきた物の積み重ねが、道後の街を作っていると思った」と言われていた。
作品に対し「4つあるアニメーションはランダムに投影されるので、順番はわかりません。その映像と道後の湯に浸かってゆっくり過ごす「ゆとり」の中で、4枚の歴史絵も振り返ってみるとさらに奥行きが広がり深く楽しく感じられる事でしょ。」と話された。

道後オンセナート

【杵村史朗氏の「ふりかえる」】
タイトル:ふりかえる
場所:道後温泉本館2階 神の湯2階席
期間:2013年12月24日〜2014年12月31日

川瀬浩介氏の作品「LASTing WAVE」は、椿の湯のロビーにモニュメントがある。非常に大きな作品は毎回◯時30分から10分間、音と光の静かでやさしく郷愁の誘う曲と光のページェントが繰り広げられる。

道後オンセナート

なぜ六角形であるか、川瀬氏は語る。
アートという枠にとらわれないで自由に感じていただきたかった事が大きく、温泉利用客の動線上に自然と入り込むことで生活のリズムを崩すことなく一体化している。3面が一つの作品になっているので、両側で同じものを見ることができる。

道後オンセナート

さまざまな表情をみせながら光が明滅を繰り返し、心地良い音の響きが空間全体に広がる。その音の中に汽笛などの生活のなかで聞こえる音が、時に聞こえてくる。それらの音が自分の過去につながり当時の心情を重ねあわさり同化するとき、物語が始まる。そして、そこにもう1つの光が加わることで、瞑想的で神聖・自由に広がる自分だけの物語は完成されるのである。

道後オンセナート

「綺麗な物を作りたかったです。今回の作品は、見る人がそれぞれ音と光から自由に感じ取ってもらいですね。ロビーで体感し、ゆっくり湯に浸かり、湯上がりにさらにゆっくりと体感してみてはどうでしょうか。光は純粋・無我、没我の世界に引入れてくれますからね。」と川瀬氏は作品に対して話す。
川瀬氏の意思表現可能な1つの完成された楽器として意味している、と言ってもいいのかもしれない。

道後オンセナート

「今回、四国松山道後は初めてでした。これまで高松・徳島へは行った事があるのですが、四国に来て不思議と居心地の良さを感じるのです。その理由がまだわからない・・・今回のイベントが終わった時に、それが見つかると良いと思います。」と道後の感想を言われていた。

道後オンセナート

【川瀬浩介氏の「LASTing WAVE」】
タイトル:LASTing WAVE
場所:椿の湯
期間:2013年12月24日〜2014年12月31日
時間:毎時30分〜40分

藤木寛子氏の作品「路と鳥」は、道後に昔から伝わる白鷺伝説をテーマにしている。
白鷺伝説とは、「脛に傷を負った1羽の白鷺が、岩間から噴出する温泉を見つけ、毎日浸かりにきたところ、傷は完全に癒え元気に飛び去ったのを見ていた村人が、不思議に思いこの温泉に入浴してみると爽快で疲労回復し病人も治癒するものが現れ、多くの人々に利用されるようになった。」(この伝承に由来する白鷺の足跡が残った鷺石が、放生園に保存されている。)作品は1分半のもので、道後温泉駅前の足湯やからくり時計のある放生園(ほうじょうえん)から見えるビル、最上階の窓を使っている。

道後オンセナート

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昔のおぼろげな時代を、セピア調からカラーへと色の変化と共に見せることで分かりやすいものになっている。
傷を負った白鷺が温泉で癒されるのを知った森の木々たち・・・やがて人々の伝承してきた道後温泉白鷺伝説は、自然と人・時の流れと共に移り変わりゆく環境の変化とともに、関わる人の思いや自然の心象風景は変わること無く流れてきた。その時代の流れと共に歩んできた道後温泉は、これまでもそしてこれからも人の優しさを育んでいくのであろう。
白鷺の営みから、道後の街を過去から現代、そして未来へとつなぐ様を影絵という平面の映像の中に奥行きと深みを感じさせる手法で作り上げている。タイトルの『路と鳥』から鷺という文字につながる事を表している。

道後オンセナート

道後オンセナート

「歴史的な建造物である道後温泉本館と林立する温泉旅館ビル群、この対比が面白く、歴史ある建物を近代的な周りが支えているのを感じました。」と道後の感想を話す。

道後オンセナート

【藤木寛子氏の「路と鳥」】
タイトル:路と鳥
場所:道後温泉観光開会窓枠
期間:2013年12月24日〜2014年12月31日
時間:18時〜24時

平野氏の作品「GINGA」は、クリスマスイブの夜に幻想的な600の光が道後エリアを流れた。
この「GINGA」は、出身の金沢で盆時に行われる提灯行列で味わった想いを形にし、新発見が街をとらえ直し、新しい街作りに繋がってほしいという願いのもと各地でシリーズ化されている。

道後オンセナート

城下町である金沢の狭く暗い路地を、提灯の灯りで歩いた提灯行列。子どもの平野さんは提灯からこぼれる灯りで見た地元の街に、様々な新発見があり心が踊ったそうだ。
提灯ではなく、なぜ風船なのか・・・自由のシンボル「風船」に希望のシンボル「光」を入れたと平野さんは言われる。少しの風でも「動」となる風船は「自由」を、その優しい温かい光は「希望」を感じさせ道後温泉を優しく包みこんだ。

道後オンセナート

地元の小学生たちが多く参加した今回のイベント。平野さんは、積極的な街であることに感動したそうだ。この「GINGA」を通し何かを感じた子どもたちがいたことを、平野さんは一緒に歩きながら感じられたのではないだろうか。

道後オンセナート

道後オンセナートを通じ愛媛に初めて来られた平野さんは、「歴史ある道後温泉が田舎ではなく、街の中心にありびっくりした。街の中に歴史が”ポツン”とある道後温泉で、伝統あるものがこのような形で残っている事は素晴らしい。だからこそ活かしきれていない部分を、ゆっくりと歩く事で新しい発見をして見直してほしい。また新しく作り直してほしい。」と、作品に対する想いと道後の感想を語ってくれた。

道後オンセナート

【道後オンセナート】
グランドオープン:2014年4月10日(木)
フィナーレ:2014年12月31日(水)
ゆだまんの記事:http://ritoumeguri.com/12271/
道後オンセナート2014「うぶ湯 SIMPOSIUM」の記事:http://ritoumeguri.com/12342/
道後オンセナート総合案内所開設記事:http://ritoumeguri.com/12982/
道後オンセナート2014プレイベントの記事:http://ritoumeguri.com/13895/
道後オンセナートHP:http://www.dogoonsenart.com/

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