2012年8月〜2015年6月の約3年間「瀬戸内・松山食べ巡りプロジェクト」で、取材撮影をした編集部によるレポートです。
事業期間終了と共に運営変更に伴い、「瀬戸内・松山 しまめぐり」の事業では更新することはありませんので、ご了承いただきますようお願いします。
松山市北条庄地区の庄大根を収穫し、味わう
松山市北条の庄地区に約150年前から伝わる「庄大根」。
その庄大根に触れてみようと、いよココロザシ大学では2013年12月8日に『至高のスローフード「庄大根」』と称して授業が開催された。
地元農家による「庄だいこん研究会」の坂本信子さんから、歴史ある伝統野菜であることや庄大根の特徴、普及している青首大根との違いや栽培の難しさなど庄大根の話があった。またエコ栽培(科学肥料や科学合成農薬を県が定めた基準から5〜3割以上削減して行う栽培)で育てているため、「愛媛県産には愛がある」のシールを頂いているがその分生産が大変のようだ。
話を聞いた後は坂本さんの育てている畑に行き、庄大根を収穫させて頂いた。
青々した立派な葉の下には、赤首の大根が土から見えている。霜にあたることにより、きれいな赤色にかわっていくそうだ。
さぁ、どの大根が立派か!選ぶみなさんの真剣な眼差し。初体験の方が、「葉からこの大根ならと選んだらとっても立派な大根でした!」とうれしそう。みなさん素敵な笑顔であった。
私も収穫させて頂いたが、思ったより簡単に抜けた。実は庄大根の旬はこれからなので、もう少し後になるともっと立派だとか!でも今の時期でも太く、重く立派な庄大根である。
庄集会所に戻り、庄だいこん研究会のみなさんによる庄だいこん尽くしの料理を頂く。
その前に、庄大根を磨り下ろして青首大根との違いを味わったり、おにぎりにはったい粉をまぶして自分のおにぎりを作る体験などをした。青首大根に比べ水分が少ないため、磨り下ろすのは固く感じたそうだ。
待ちに待った庄大根尽くしの料理を頂きた。
はったい粉をまぶしたおにぎり、くちかね汁、庄大根のふろふき、庄大根サラダ、庄大根の甘酢漬け、庄大根の煮物、庄大根のおろし、はやとうりなど盛りだくさん。
料理を頂きながら、庄だいこん研究会の方にお話を伺った。
一度はなくなりつつある庄大根を復活したのは、昭和57年から選抜採種をスタートさせて平成6年からスタート。 復活した庄大根を守るために、庄大根研究会を発足された。12年ぐらい前からエコ栽培(愛媛県指定の肥料・農薬使用)にしているので、とても手間がかかるが安心安全な庄大根に仕上がる。特に葉が出始めの頃は虫が付きやすく、管理が大変だそうだ。
またくちがね汁(口金汁)は伝統料理であり、毎年7月20日に庄地区で行われる「虫祈祷」の豊作祈願の縁起物として、はったい粉をまぶしたおむすびと一緒にお供えし食べられているそうだ。
庄大根を味わいながら、庄大根の話に花が咲いた。
庄地区のいたるところで作られてきた庄大根であるが、長い歴史の中でその本来の姿を失いつつあった。このように地元の野菜を守り続け、丹誠込めて作られている地元の方たち。しかしながら生産者の多くは、高齢者というのも現実である。より多くの方に庄大根をまずは知っていただき、味わってもらいたい・・・そのように言われていた。
今回の主催であるいよココロザシ大学とは、愛媛県自然保護課から事業委託を受け、「伝えていこう!生きものの恵みと愛媛の暮らし」をテーマにした授業を県内各地で行われている。楽しみながら「学びあい」、「誰もが先生、誰もが生徒、どこでも教室」のコンセプトで運営されている。
今回のテーマである「スローフード(slow food)」とは、その土地の伝統的な食文化や食材を見直す運動、またはその食品自体を指すことばである。地方特産伝統野菜「庄大根」を味わいながらスローフードについて考えるという授業であった。
いよココロザシ大学のこのような取り組みにおいて、「学ぼう」という気持ちがあればどのような形でも学べるのだと改めて感じた。生産者が先生になり、また集まった生徒が先生にもなりうる・・・人と人とはそのようにして繋がっているのかもしれない。そしてそこにはもう一つ、自然とのつながりもあることを感じた。まさに、いよココロザシ大学が取り組まれている「生物多様性」について感じた授業であった。生物多様性とは、1992年につくられた国際条約で「地球に生きる生命の条約/Convention for life on Earth」とも呼ばれている。地球に生きる生命の多様さ、それを支える環境の多様さを守りそこから得られる恵みを公平に分け合い、未来に受け継いでいくための世界の約束事である。わたしたちの生活がどのように自然や生きものとつながっているかを発見して、自然や生きものとのつきあい方を見直すことを目的にいよココロザシ大学では授業をされている。
※庄大根ついては、別レポートでご紹介。
【いよココロザシ大学】
いよココロザシ大学HP:http://www.1455634.jp/