2012年8月〜2015年6月の約3年間「瀬戸内・松山食べ巡りプロジェクト」で、取材撮影をした編集部によるレポートです。
事業期間終了と共に運営変更に伴い、「瀬戸内・松山 しまめぐり」の事業では更新することはありませんので、ご了承いただきますようお願いします。
こだわりの素材で、守られ続けられている創業当初の味
松山市銀天街から北の路地に入った場所に佇む昭和24年創業の老舗ことり。先代の味を引き継ぎ、守られ続けられている鍋焼きうどんは、松山のソウルフードとして親しまれています。
昔ながらの木のテーブルと椅子。昭和の佇まいの店内は、こころを落ち着かせてくれます。
メニューは、「鍋焼きうどん」と「いなりずし」のみ。
熱の伝わりが早く冷めにくい上、割れたりなどの危険性がないアルミ鍋の蓋を開けると、出汁の香りが漂います。
このアルミ鍋は、毎年お正月に全部入れ替えられています。新年に新しいアルミで新たな気持ちにしたいと・・・
9~11月の伊予灘の秋獲れいりこからとれる透明で澄んだ味と北海道利尻産の一等昆布で、朝3時から1時間半かけて出汁をとります。その出汁に合う特注のうどんの麺と醤油。創業当初から変わぬこだわりの素材で、そこから生み出される味は創業当初の味。
味を噛み、食を味わう3姉妹の長女・森田忍さんのその舌で引き継がれた先代の味を、ご主人の森田史之さんは昭和48年から一緒に守り続けられています。
「食べるものに手抜きはできない。儲けではなく、美味しくて安心なものをお客さんに食べてもらうのがうれしい」と史之さんは話されます。また史之さんが育った戦争中は食べるものもがほとんどなく、お腹を満たすために食べていた。『食』というのは体の基本であり、元気だからこそ仕事ができ「美味しい」と食べられると、『食』に対する想いを話してくれました。
先代が始められた当初は今ほど物がない時代。子どもたちに食べさせたい・・・鍋焼きうどんを始めたきっかけだったようです。当時はうどんの麺は手打ちで作られていましたが、今は業者に「ことり」の麺の製法で作ってもらっています。麺のきめ細かさ、柔らかさの中にある優しいコシ。そこに出汁が染み込み、噛むと口の中で広がります。
国産の肉は別鍋で、砂糖・醤油などで甘く煮込みます。その肉から出る甘みが、出汁に溶け込み「甘さ」と変化します。
3姉妹のように優しく可愛らしく・・・きっとそのような想いがあって、「ことり」と名前を付けられたのではないかな。と言われていました。
松山の人からも観光客からも愛され続けられている「ことり」の鍋焼きうどん。1度来たお客さんが2度、3度と足を運びたくなる優しく温かいお店です。
【ことり】
住所:愛媛県松山市湊町3‐7‐2
電話番号:089-921-3003
営業時間:10~14時(売切次第終了)
定休日:水曜日
駐車場:無