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2012年8月〜2015年6月の約3年間「瀬戸内・松山食べ巡りプロジェクト」で、取材撮影をした編集部によるレポートです。
事業期間終了と共に運営変更に伴い、「瀬戸内・松山 しまめぐり」の事業では更新することはありませんので、ご了承いただきますようお願いします。

|文化・歴史

四国霊場第49番札所 西林山 三蔵院 浄土寺

平安時代の中期に「南無阿弥陀仏」を唱えて人々に念仏を広めた空也上人と縁深い西林山 三蔵院 第49番札所 浄土寺は、空也ゆかりの事物が多く残る寺です。

浄土寺

お遍路さんが奉納した多くの草履がかかっている仁王門をくぐると、仏足石・弁財天と続きます。石段を上った正面に本瓦葺き寄棟造の本堂、右に大師堂があります。

浄土寺

浄土寺

浄土寺

浄土寺

浄土寺

浄土寺

749〜757年に孝謙天皇の勅願によって恵明上人が創建。このとき行基菩薩が彫刻した釈迦如来を本尊として祀り開創となります。後に弘法大師が訪れ霊場として定め真言宗に改宗。寺域は八丁四方におよび、66坊の末寺をもつほどの大寺となりました。1416年の兵火で焼失し衰退・荒廃となりますが、1469〜1487年に領主である河野道宣公によって再建。本堂と内陣の厨子は当時の建造で、和洋と唐様が折衷した室町時代の代表的な建物は、国の重要文化財に指定されています。本堂・厨子ともに1961年に解体・修理が行われました。

浄土寺

浄土寺

入母屋妻入・二軒扇垂木などの造りの厨子は、繊細優美で唐様の秀作です。厨子の壁面には、楽書(落書)が残されています。遍路たちの墨書と言われ、大永の年号が入った「遍路」の文字は遍路のおこりを知る手がかりともなっています。※ただし一般公開は行っていません。

浄土寺

浄土寺

浄土寺

木々や数多くの花があり、四季折々の風情を感じます。整然とした中に趣がある境内で、心を和ませ穏やかにし参拝者を優しく迎えてくれます。

浄土寺

浄土寺

本堂横に、阿弥陀堂と愛染堂が並びます。阿弥陀堂には「阿弥陀如来像」、愛染堂には「愛染明王」が祀られています。

浄土寺

浄土寺

浄土寺

鐘楼の奥、4本脚の四脚門をくぐると納経所があり、途中に七福神の石像があります。釈迦如来が本尊である浄土寺は、伊予十三彿霊場の1ヶ寺でもあります。伊予十三佛霊場は、発願の寺である明星院・大蓮寺・浄土寺・太山寺・圓福寺・地蔵院・極楽寺・香積寺・西林寺・道音寺・八坂寺・高音寺・理正院・成願寺・結願の寺である金毘羅寺の15ヶ寺です。

浄土寺

浄土寺

浄土寺

浄土寺は牛峰山(うしのみねざん)の麓にあり、牛峰山と日王山との間が「空也谷」と呼ばれています。この空也谷は、10世紀半ばに空也上人の修行場であったと言われ縁が深いです。957〜961年の3年間、浄土寺に滞在し布教して親しまれました。空也(903〜972年)は、平安中期の僧で日本浄土教の先達です。空也上人は諸国を巡行、各地で教化に努めながら道・寺・井戸などを造り、「市の聖」「阿弥陀聖」と呼ばれ崇拝されたといいます。

浄土寺

自刻の木像を残したと伝えられている「空也上人立像」は、像高122.4cmの寄木造りで重要文化財に指定されています。左手に鹿角杖を持ち右手で鉦鼓をたたき、口元からは「南無阿弥陀仏」の6文字の念仏が仏の姿になったことを意味しています。空也が創建したと言われる六波羅蜜寺(京都)に、同形の像(康勝作)が所蔵されています。※ただし一般公開は行っていません。

浄土寺

浄土寺

また境内には、松山市出身の俳人・正岡子規の「霜月の 空也は骨に 生きにける」の句碑が立ちます。空也の肉体は白骨となっても人々の胸には念仏の教えが今も生きている、という意味です。他にも「空也松」など空也上人の姿がいまに残ります。

浄土寺

浄土寺境内にある観音堂裏に、牛峯山八十八ヶ所入口があります。1993年頃に前住職である䕃谷俊彦氏が、「気軽に巡礼ができるように・・・」とミニ四国八十八ヶ所を設けたそうです。

浄土寺

木階段の遊歩道を登ること数分、展望台と浄土寺公園の二手に分かれます。この展望台が日王山に向かう道で、浄土寺公園が牛峯山八十八ヶ所に向かう道です。浄土寺境内から距離にして160m、小さな公園の奥には「牛峯地蔵尊」のお堂があり、その奥に「浄土寺奥之院 牛峯山四国八十八ヶ所石佛」があります。各札所の本尊と同じ石仏が左右に並びます。

浄土寺

浄土寺

浄土寺

浄土寺

浄土寺

中興21代目の䕃谷典彦(かげや てんげん)さんは、2011年に住職になられました。真言宗 豊山派である浄土寺の教えを、東京の大正大学で学ばれました。次男の典彦さんは他の道に対する夢を持ちながらも、様々な要因から中学生の時に跡を継がれること決意。その時の葛藤は計り知れないものなのかもしれません。しかしその道を目指し修行され、人としても僧侶としても心を育てられたのでしょう。

浄土寺

典彦さんは「同じ目線で親しみやすい僧でありたい」と話します。
かつて、寺は子どもたちの遊び場として身近であったが、時と共にその姿は少なくなりつつあります。身近に親しみやすい場所に・・・その想いは、境内の花が生み出す柔らかさや住職の人柄に表れます。そして自分自身の体験により理解する、という考え方を大切にされています。それは、法(道理)を説くという「説法」の教えに基づきます。典彦さんの気さくでおおらかな人柄に、安堵する人も多いのではないでしょうか。

浄土寺

歴史ある浄土寺が代々引き継がれている想い、それは典彦さんが経験し感じた事が基盤となっているのかもしれません。むかし親戚が集まった時に、祖父がクジ付きの菓子を用意してくれた思い出を話してくれました。「楽しい思い出であり、それを用意してくれた祖父の気持ちが今となってわかる。そのような想いは、引き継がれるものである。」と言われます。浄土寺が和やかな空気で迎え入れてくれるのも、温かい住職の想いで溢れているからかもしれません。
そして国の重要文化財に指定されている浄土寺は、その管理も重要であり、歴史と共に風化していく味わいを守っていくのも自分の役割であると言われていました。

浄土寺

【四国霊場第49番札所 西林山 三蔵院 浄土寺】
住所:愛媛県松山市鷹子町1198
TEL:089-975-1730
駐車場:普通20台(200円)・ワゴン(200円)・マイクロ(500円)と大型(1,000円)4台
    ※寺行事の場合は全車種無料
宿坊:無

宗派:真言宗豊山派
本尊:釈迦如来(伝行基菩薩作)
開基:恵明上人
創建:天平勝宝年間(749〜757)
真言:のうまく さんまんだ ぼだなん ばく

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